無料書評閲覧サイトALL REVIEWSを開設してからすでに4年あまり経過しましたが、このたび、「ALL REVIEWS」の延長と位置付けまして、神田古書街発祥の地である神田神保町すずらん通りの一角に新しいタイプの書店「PASSAGE(パサージュ)」を開店する運びとなりました。そのコンセプトを故・橋本治さん風にひとことで表現しますと、「なら、自分で本屋になっちゃえばいいじゃん!」ということになります。
では、この「なら」の前にはどんな言葉が来るのでしょうか?
まず、ALL REVIEWSに参加くださいました書評家から行きましょう。書評家にはせっかく書評に取り上げてもリアル書店にはその本が置いてないという嘆きがあります。もちろん、アマゾンを始めとするオンライン書店でならALL REVIEWSでも購買可能なようになっていますが、しかし、やはり書評家の本心からしたら、リアル書店で実際に手に取ってから購入を決めてもらいたいということになるはずです。しかし、リアル書店には当該本がない。「なら、自分で本屋になっちゃえばいいじゃん!」ということなのです。
また、ALL REVIEWS参加の書評家は作家、批評家、歴史家等々でもあり、みな、多くの本を出版されていますが、リアル書店に出向くと一様に次の言葉を発するはずです。「私の本が置いてない!」これまた、「なら、自分で本屋になっちゃえばいいじゃん!」ということになるのです。
さらに、物書きのほとんどは増えすぎた本の処置に困り、古本屋を呼んだり自分で持っていったりしますが、しかし、そのときには引き取り価格のあまりの安さに愕然とします。ヤフー・オークションやメルカリに出品するという手もありますが、これはやってみると案外面倒くさいものです。そこでまた同じフレーズとなります。「なら、自分で本屋になっちゃえばいいじゃん!」なのです。
ことほどさように、書評家や作家、批評家、歴史家が抱える悩みや嘆きは、本来であれば、「なら、自分で本屋になっちゃえばいいじゃん!」で解決できるはずなのですが、しかし、これは言うはやすく行うは難しの典型であります。うーん、難しいか!すると、このとき、私の脳裏にふと、次のような解が浮かんだのです。
ALL REVIEWS(より正しくはALL REVIEWERS)
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ALL BOOKSELLERS
そう、一人一人では困難でも、「みんなでやれば怖くない」なのです。じつは、こうした形態の物書きの合同書店というのは歴史で初めてではありません。戦時中、表現の場を失った鎌倉文士たちが自分たちの所有する本を持ちよって鶴岡八幡宮近くに開店した合同古本屋「鎌倉文庫」があります。久米正雄、川端康成、小林秀雄などの鎌倉文士たちは合同で店舗を借り、分担して棚を自宅から持ち寄った本で埋めていったのです。
この「鎌倉文庫」という先例にならってALL REVIEWS参加書評家によるALL BOOKSELLERSを創ればいいのではないか、こう考えたわけです。つまり、ALL REVIEWSで借りた店舗を本棚で埋め尽くし、その本棚の棚ひとつひとつをALLREVIEWS参加書評家に使っていただいて、自分なりの本屋・古本屋を開業していただければいいのではないか、と。そして、同時にこうも考えました。ALL REVIEWS参加書評家の悩み、嘆きはだれにでも共通しているのではないか?
たとえば、出版社です。出版社は書店で自社の本を常備してくれる棚がないことが最大の悩みです。とくに地方の出版社や小出版社はそうです。これに対しては、やはり「なら、自分で本屋になっちゃえばいいじゃん!」なのです。また、いろいろな出版社を渡り歩くことの多い編集者も、書店には自分が編集した本が並べられていないという不満を抱えています。
「なら、自分で本屋になっちゃえばいいじゃん!」
ところで、よく考えると、一般の読者、すなわち、本を買う側の人たちにとっても、悩みや嘆きは同じではないでしょうか? すなわち、自分が買いたくなるような本が新刊書店には並べられていないし、いざ不要になった本を処分しようとするとリアル古本屋では買い叩かれるし、ネットオークションは手数料が高すぎる。ひとことでいえば、世の中の大半を占める一般読者の抱えている問題もまた同じであり、その問題に対しては、やはりこれしかないのです。
「なら、自分で本屋になっちゃえばいいじゃん!」
かくて、本を愛する人すべての悩み、嘆きを解決する(かもしれない)リアル新刊書店兼古書店「パサージュ」の開店とあいなったなったわけです。本の未来に望みを託し、理想に少しでも近づきたいと願うすべての方の参加を切に期待します。
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