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ブックセラーの歴史:知識と発見を伝える出版・書店・流通の2000年

¥1,800税込・送料別
商品の状態
非常に良い
ISBN
9784562059768
この本がある棚:All you need is BLUE LOVE
【2026/10/19】1年ぶりに一日店長をやることにしました。
10/21(水)12:00~19:00 @SOLIDA 1F
2Fにある💙の3つの棚の商品を陳列します。
当日限定で代々木上原ミレイネのお菓子と棚主の蔵書をセットした企画3点を販… 棚の紹介を読む
商品の説明
著:ジャン=イヴ・モリエ / 翻訳:松永 りえ
【本書に載せられなかった訳者あとがきの「ような」もの】

この本をぱらぱらと読み返すたびに、私がいまSOLIDAで棚主をやるにあたっての手法は無意識にこの本の影響を受けていたのだな、と実感します。

私は学部卒で修士以上の専門的な知識もなければ、文学、経済、歴史いずれも教養をもちあわせていません。ですから、この内容のお仕事はとてもお引き受けできないと思って、一度お断りしました。けれども編集者さんは他に引き受けられそうな翻訳者に心当たりがないとおっしゃり、私のほうでその3カ月強で初稿を収めるという納期で他にやってくれそうな翻訳者さんを探すことができず、共訳で声をおかけてしてまとめるにしても、内容の性質上それでも時間が足りないと判断して、このままずるずるお返事を保留していたら、時間がどんどん削られていくから誰も得しないと覚悟を決めてお引き受けした次第です。

それぞれ版元さんや編集者さんには、さまざまなご事情があります。翻訳途中で一度、実質自分しか頼れないという責任のあまりの重さに押しつぶされて、狭心症を起こして救急車で運ばれました。だから初稿の締切りを1週間ほど延ばしていただいた思い出の本です。印刷所に入稿後、もうこんなヘビーな書籍翻訳はしたくないと思ったほどの本でした。

この本にはおびただしい数の固有名詞が登場します。私はたとえば古代ギリシャ・ローマの有名人がフランス語で表記されてもすぐに日本語に正しく思いつかないほど知識がありません。というか、ギリシャの哲学者の名前を正しく覚えていません。おびただしい数のフランスの県名が出てきても、それをカタカナ表記だと一般的にはどうかも知らなかったので、おそらく翻訳そのものに使った時間の10倍はそういう言葉、固有名詞を確認し、入力間違いをしないための作業に費やしました。まず、当たりをつけるのが大変でした。

もし今ならChat GPTといったAIがありますので、少なくとも参考にした文献を絞ってくれます。だから、そこから精査すればいいし、そういった確認作業にそこまで時間をかけずに済んだと思います。だからやらなければならないことの出だしがやはり違ってきますね。ですから、純粋に原書を楽しみ、翻訳作業を楽しめたかもしれません。AIには色々問題もあります。間違いも多い。けれども、使いようによっては、もっと私のように、ほぼすべてひとりで文責を負わねばならないような末端の翻訳者でも、文章そのものを書くための知恵を絞ることに集中するという本来の仕事に力を入れることができるようになるかもしれない。

といっても、昨今、AIの実際の使われ方は文章を作る方に寄っているそうですが、それもよくないなと思っています。最終確認をするのは結局人間ですから。著者の意図を全面的に汲み出しきって、その微妙なニュアンスを日本語に再現できるかは、結局人間です。

ともかく、もう印刷所に収めた時点で、私はもう完本は見たくないと思ったほどつらい経験でした。編集者さんが見本の本を数冊私あてに送ってくださっても、コロナワクチンの副反応がひどくて、しんどすぎて発売日当日まで箱を開けもしなかった。でも「発売日だから知り合いには告知しないと」と箱を開けてみたら

びっくり!

帯に鹿島茂さんのキャッチコピーが掲載されていたのです。ちなみにこの翻訳作業で編集者さんと私の間でいっさい鹿島先生のお話は出てきていません。

え? 20年以上前、無職で、もちろん翻訳業なんてはじめてもおらず、夫の会社の社宅住まいの主婦だった私が、ただ当時は先生の本を「図書館で借りて読む」のが大好きで、だから横浜の某カルチャーセンターで19世紀フランスの持参金システムについての講座を聴きに行ったあの鹿島先生、ざっとでもこの本見てくださったの?
その帯の背中にある「鹿島茂氏推薦!」という文言には、いつも爆笑してしまいます。いやはや、本を売る者の商魂というのは古今東西たいしたものです!

読み返してみたらこの本、やっぱり面白いです。翻訳しているときはつらすぎてそこまで思い入れがなかったけれど、過去二千年、本を提供するという行為はさまざまな人々によるさまざまな手法がありました。中世ではキリスト教の縛りがきつく、公には宗教書ばっかりになっちゃった時代もありましたが、その間、古代ギリシャ・ローマの哲学に関連する文書はイスラム文化圏で研究されていたおかげでいまも残っている一因となっていたようです。書籍商はあれやこれや工夫を考えて、考えて、考えて、本を読みたいと求めている人に届けるのみならず、お金を儲けようと、大陸を練り歩いたりした時代が歴史的には最近までありました。そして、現代の世界各地の書店のあり方・工夫はすばらしいです。

本書を出品するのに、半額にしているのは、以前もう少し高めに出したけれど、なかなか売れなかったというのが理由のひとつです。私が棚主を続けられるよう保険代わりに、そしてどなたか興味もっていただければうれしいなと思って棚に置きます。

なお、鹿島茂先生のサイン本ではありません。あしからず。

以前、ずっと売れなかった本書を、偶然SOLIDAにいらした鹿島先生に帯の部分にサインをお願いして、ちらっとXで写真見せて値段を変えずにそのまま出したら翌日に売れてしまいました。
ちなみに、そういうたまたま降ってきた幸運や偶然性は、私が棚主をやるうえでかなり大事にしたいと思うポイントです。常連のお客様も、偶然知った方も等しくありがたいのですが、本や書店のあり方としての面白さは偶然の出会いだと思うので、どちらかといえば私は後者寄りの出品をしています。

さて、あのときはほとんど感謝できませんでしたし、私のほうが「期日までにやらなきゃいけないって話だったんだから、やるしかないじゃないですか!」とメールで半ば怒鳴りつけた記憶もぼんやりとあります。いまとなれば、この機会をくださった原書房の編集者の百町研一さんに感謝申し上げます。おかげさまで私はブックセラーライフを楽しんでおります!

All you need is BLUE LOVE 棚主の松永りえより💙
All you need is BLUE LOVEの選書理由
本屋さんなら読んでみてもいいと思います!
本屋さんじゃない人は、2000年ものあいだ、書籍商が本を売ってきた面白さと創意工夫と苦労をいっしょに味わってください💙🩷
それとですね、これは帯が肝心!鹿島茂さんの推薦コメントが載ってるから😆